限られた予算の中でMVP(実用最小限の製品)を作る際、最も難しい判断の一つが「何を作り、何を諦めるか」です。あれもこれも欲しくなってしまい、結局予算を超えてしまう、というのはよくある失敗です。この記事では、機能を削る優先順位のつけ方を解説します。
この記事で分かること
機能を削る判断は、感覚だけで行うと後悔しやすい作業です。「せっかく思いついたのだから、全部入れたい」という気持ちと、「予算300万円に収めなければいけない」という制約は、多くの場合ぶつかります。この記事では、その板挟みを解消するための、具体的な判断基準を用いて優先順位をつける方法を紹介します。
結論を先に示すと、意識したい判断基準は次の3つです。
- 「その機能がないと、サービスの核となる価値が成立しないか」で判断する
- 「今すぐ必要か、後から追加できるか」で判断する
- 「自分で代替できる方法があるか」で判断する
この3つの基準を順番に当てはめていくだけで、「なんとなく全部大事に見える」状態から、「これは削れる、これは削れない」という具体的な仕分けに進むことができます。以下、それぞれの基準を詳しく見ていきます。
判断基準1:核となる価値が成立するかどうか
最も重要な判断基準は、その機能がなければ、サービスとして提供したい核となる価値が成立しなくなるかどうかです。この基準で判断すると、機能を「絶対に必要」と「あれば嬉しいが、なくても成立する」の2つに分けられます。
例えば、「毎日の売上を記録し、月ごとに集計するツール」であれば、「売上を入力する」機能と「月ごとに集計して表示する」機能は核となる価値そのものです。一方、「集計結果をグラフで見やすく表示する」機能は、あれば嬉しいものの、なくても核となる価値(集計自体)は成立します。
この基準に沿って、まず核となる機能だけをリストアップし、それ以外はいったん「後回し」の候補として整理することをおすすめします。アイデアの言語化の段階で、この核となる価値を明確にしておくと、機能を削る判断がしやすくなります。
具体例で確認する:予約管理ツールの場合
もう少し具体的な例で考えてみましょう。個人サロンや小規模店舗向けの「予約管理ツール」を作るとします。思いつく機能を並べると、次のようなリストになるかもしれません。
- 予約の登録・確認・キャンセル
- 予約状況の一覧表示(カレンダー表示)
- リマインドメールの自動送信
- 顧客ごとの来店履歴管理
- クーポン・ポイント機能
- LINE連携での予約受付
- スタッフ別のシフト管理
- 売上レポートの自動集計
このうち、「予約の登録・確認・キャンセル」がなければ、そもそも「予約管理ツール」としての核となる価値が存在しません。ここは絶対に必要な機能です。「予約状況の一覧表示」も、予約を確認する手段がなければ運用が成り立たないため、核となる価値に近い機能といえます。
一方、「クーポン・ポイント機能」や「スタッフ別のシフト管理」は、予約管理という核となる価値がなくても成立する、あるいは核となる価値そのものではない付加機能です。これらは、最初のMVPでは思い切って削る候補になります。
判断基準2:今すぐ必要か、後から追加できるか
2つ目の基準は、その機能を今すぐ実装する必要があるか、それとも後から追加できるかという時間軸での判断です。
多くの機能は、最初のMVPには含めず、後から追加することが可能です。例えば、「利用者からのフィードバックを集める機能」は、最初は簡易的な連絡フォームで代替し、後から専用の機能を追加する、という進め方ができます。「今すぐでなければ実現できない機能」と「後から追加できる機能」を見分けることで、最初のMVPに含める範囲を絞り込みやすくなります。
先ほどの予約管理ツールの例で言えば、「リマインドメールの自動送信」は、最初のMVPでは手動でメールを送る(あるいはSMSを送る)という運用でカバーし、利用者数が増えて手作業が回らなくなったタイミングで自動化する、という進め方ができます。「顧客ごとの来店履歴管理」も同様に、最初は簡易的なメモ欄で代用し、後から専用の履歴機能を追加することが可能です。
このように、「後から追加できるかどうか」を基準に考えると、最初から作り込む必要がある機能は意外と少ないことに気づきます。
判断基準3:自分で代替できる方法があるか
3つ目の基準は、システムの機能として実装しなくても、自分の手作業や、既存の別のツールで代替できないかを確認することです。
例えば、「利用者に定期的にお知らせを送る機能」は、最初はシステムに組み込まず、メール配信サービスを別途使って手動で送る、という代替方法があります。すべての機能をシステムに組み込む必要はなく、当面は手作業や既存のツールで済ませられる部分がないか、確認する価値があります。
代替できる方法があるかどうかを考える際は、次のような既存ツールが候補になります。
- スプレッドシート(Googleスプレッドシート等)による簡易的な台帳管理
- 汎用のメール配信サービスによる一斉送信
- チャットツール(LINE公式アカウント等)による問い合わせ対応
- 汎用のフォームサービスによる申込・アンケート受付
- カレンダーサービスとの連携による予定管理
これらの既存ツールで代替できる機能は、開発コストをかけずに運用を始められるため、予算を大きく圧縮できる部分です。ただし、代替手段には「手作業が発生する」「利用者数が増えると運用が回らなくなる」といった限界もあるため、どのタイミングで専用機能に切り替えるべきかは、あらかじめ目安を決めておくとよいでしょう。
3つの基準を使った、機能の仕分け方
実際に機能をリストアップしたら、次の4つに仕分けることをおすすめします。
- A:核となる価値であり、今すぐ必要(最初のMVPに必ず含める)
- B:核となる価値だが、後から追加できる(次の段階で追加を検討)
- C:あれば嬉しいが、必須ではない(優先度は低いが、余裕があれば検討)
- D:手作業や既存ツールで代替できる(システムに組み込まず、別の方法で対応)
この仕分けを行うことで、「絶対に必要なもの」から順に、限られた予算をどこに使うべきかが明確になります。
なお、こうして仕分けた機能一覧を持って開発会社に相見積もりを取る段階になったら、提案書のどこを比較すればよいかという視点も欠かせない。提案書を比べる判断軸では、複数社の提案を比較する際の6つの判断軸が紹介されている。
先ほどの予約管理ツールの例をこの4分類に当てはめると、次のようになります。
| 機能 | 分類 | 理由 |
|---|---|---|
| 予約の登録・確認・キャンセル | A | 核となる価値そのもの |
| 予約状況の一覧表示 | A | 運用の前提として今すぐ必要 |
| 顧客ごとの来店履歴管理 | B | 価値はあるが最初はメモ欄で代替可能 |
| LINE連携での予約受付 | B | 需要が見えてから追加でも十分機能する |
| クーポン・ポイント機能 | C | なくても予約管理という核は成立する |
| 売上レポートの自動集計 | C | あれば便利だが必須ではない |
| リマインドメールの自動送信 | D | 最初は手動送信で代替できる |
| スタッフ別のシフト管理 | D | 最初はスプレッドシートで代替できる |
こうして表に整理すると、Aに分類された機能だけで最初のMVPを組み立てれば、予算が大幅に圧縮できることが見えてきます。8つの機能案のうち、最初から実装が必要なのは2つだけ、という結果です。
3つの基準で判断がつかない場合の、追加の視点
3つの基準を当てはめても、AとBのどちらに分類すべきか迷う機能が出てくることがあります。この場合、次の追加の視点で考えてみてください。
「その機能がないことで、想定する利用者が離脱してしまうか」を想像してみることです。核となる価値が体験できたとしても、ある機能が欠けているだけで利用者が使い続けなくなるようであれば、その機能は実質的に核となる価値の一部と考えるべきです。反対に、機能が欠けていても利用者が使い続けてくれそうであれば、後回しにできる可能性が高いといえます。
また、判断に迷う機能については、実際に想定する利用者に「この機能がなくても使いたいと思いますか」と直接聞いてみることも有効です。自分だけの判断に頼らず、第三者の視点を借りることで、より客観的な優先順位づけができます。
判断に迷ったときのチェックリスト
機能の仕分けに迷ったときは、次の質問を自分に投げかけてみてください。すべてに「はい」で答えられる機能ほど、削っても問題ない可能性が高くなります。
- [ ] この機能がなくても、利用者は「一応目的を達成できた」と感じられるか
- [ ] この機能を使う場面は、想定する利用者の中で一部にとどまるか(全員が毎回使うわけではないか)
- [ ] 代わりに手作業や既存ツールで、当面は運用が回りそうか
- [ ] 利用者から「これがないと困る」という声が、まだ具体的には出ていないか
- [ ] 実装しなくても、サービスの説明文(一文で言い表す説明)が変わらずに成立するか
逆に、いずれかの質問に「いいえ」がつく機能は、AやBに近い、削りにくい機能である可能性が高いです。特に最後の「サービスの説明文が変わらずに成立するか」は、MVPの核を確認する上で有効な視点です。その機能を削った場合に、自分がサービスを一文で説明できなくなるようであれば、それは核となる価値に含まれています。
削った機能を、記録として残しておく
機能を削る判断をした際、「削った」という事実だけでなく、なぜ削ったのか、いつ再検討すべきかを、簡単なメモとして残しておくことをおすすめします。
例えば、「グラフ表示機能は、今回は削除。利用者が増えて、集計データが複雑になったタイミングで再検討する」というように、削った理由と再検討のタイミングを記録しておくと、後から見返した際に、なぜその判断をしたのかを思い出しやすくなります。この記録は、公開後に機能を追加する際の優先順位づけにも役立ちます。
記録の形式は難しく考える必要はなく、スプレッドシートやメモアプリに、次のような項目を並べるだけで十分です。
- 機能名
- 分類(A/B/C/D)
- 削った理由(一言で)
- 再検討のタイミング(利用者数の目安、時期など)
- 代替手段(Dの場合)
この記録があることで、「そういえば、あの機能はどうして削ったんだっけ」と迷う時間を減らせますし、開発会社との打ち合わせの際にも、削った経緯を説明しやすくなります。
機能を削ることへの心理的な抵抗
機能を削る判断をする際、「せっかくのアイデアなのに、削るのはもったいない」という気持ちが働くことがあります。しかし、最初のMVPで全ての機能を実現しようとすることは、予算超過だけでなく、開発期間の長期化や、複雑さによる不具合の増加にもつながります。
削った機能は、失われるわけではなく、「今は実装しない」という判断であることを意識してください。MVPが動き始め、実際の需要が確認できた段階で、削った機能を改めて検討する機会は十分にあります。
よくある失敗パターン
機能を削る場面では、いくつかの典型的な失敗パターンがあります。自分の判断がこれに当てはまっていないか、確認してみてください。
失敗パターン1:「せっかくだから」で機能を残してしまう
開発会社との打ち合わせの中で、「この機能もついでに入れておきましょうか」と提案されると、断りにくく感じることがあります。しかし、「ついでに」で追加された機能は、その分の見積もりが積み重なり、結果的に予算を圧迫します。追加提案があった際は、必ず3つの判断基準に立ち戻り、A〜Dのどこに位置づくかを確認する習慣をつけましょう。
失敗パターン2:競合サービスにある機能を、全部真似してしまう
競合サービスを調査していると、「あのサービスにはこの機能もある」と気づき、同じように実装したくなることがあります。しかし、競合サービスは何年もかけて機能を積み重ねてきた結果、今の形になっていることが多く、最初から全てを真似する必要はありません。競合サービスの機能は、あくまで「後から追加する機能の参考リスト」として捉え、最初のMVPに含めるかどうかは、自分のサービスの核となる価値に照らして判断してください。
失敗パターン3:「念のため」で汎用的な機能を作り込みすぎる
将来の拡張性を考えて、「念のため、色々な条件に対応できるようにしておこう」と汎用的な機能を作り込みすぎるケースもよくある失敗です。汎用性を高めるほど、実装コストは上がります。MVPの段階では、今わかっている具体的な使い方だけに対応する、割り切った設計のほうが、予算内に収まりやすく、後から実際の需要に応じて調整もしやすくなります。
失敗パターン4:削る判断を一人だけで抱え込んでしまう
機能を削るかどうかの判断を、自分一人の感覚だけで決めてしまうと、後になって「本当にこれでよかったのか」と不安になりやすくなります。可能であれば、想定する利用者や、信頼できる第三者に「この機能がなくても使いたいと思うか」を聞いてみる、あるいは開発会社に「この機能を削った場合、後からの追加はどの程度大変か」を確認しておくと、判断の精度が上がります。
専門知識を活かしたツールで、削りにくい機能とは
専門分野の業務知識を反映したツールの場合、専門的な判断ロジックそのものは、多くの場合「核となる価値」に該当し、削ることが難しい機能になります。一方で、その周辺にある一般的な機能(利用者管理、通知機能など)は、削る・後回しにする候補として検討しやすい部分です。
専門知識に関わる部分と、一般的な機能部分を分けて考えることで、どこを守り、どこを削るべきかの判断がしやすくなります。
例えば、士業や特定の技術分野の専門知識を活かした診断ツールを作る場合、「専門知識に基づいた診断ロジック」は、他の誰にも真似できない核となる価値です。ここを削ってしまうと、サービスの存在意義そのものがなくなります。一方で、「診断結果を保存する機能」「利用者にリマインドを送る機能」といった周辺機能は、最初は簡易的な形で済ませ、後から拡充していくことができます。
店舗の業務改善ツールで、削る判断がしやすい理由
店舗の業務改善のために作るツールは、実際の業務フローがすでに存在しているため、機能を削る判断が比較的しやすい特徴があります。「今、この作業は紙やExcelでどう行っているか」を振り返ることで、システム化する上で本当に必要な部分が見えやすくなります。
現在の業務フローの中で、時間がかかっている、ミスが起きやすいといった課題がある部分こそが、優先的にシステム化すべき核となる機能です。逆に、現状すでにスムーズに進んでいる部分は、システム化を急がず後回しにしても問題ないことが多いです。日々の業務を思い浮かべながら、機能の優先順位を考える視点は、店舗経営者にとって特に有効な判断材料になります。
例えば、現状すでに紙の予約台帳でトラブルなく運用できている部分をわざわざ複雑なシステムに置き換える必要はなく、逆に「予約の重複が頻繁に起きて困っている」「予約の確認に電話対応の時間がかかりすぎている」といった、明確な課題がある部分こそをシステム化の対象にするべきです。既存の業務フローを丁寧に棚卸しすることが、結果的に機能を削る判断の精度を高めます。
ペルソナ別に見る、機能を削る際の視点の違い
機能を削る判断は、誰がどんな目的でサービスを立ち上げるかによって、重視すべき視点が少し変わります。ここでは、代表的な3つの立場に分けて、機能を削る際に特に意識したいポイントを整理します。
会社員が複業として立ち上げる場合
平日の日中は本業があり、開発や運用に使える時間が限られている場合、「後から自分で機能を追加できるかどうか」が、削る判断の重要な基準になります。自分でコードを書けない、あるいは書く時間が取れない立場だと、後から機能を追加するたびに開発会社への依頼と追加費用が発生します。そのため、最初のMVPの段階で、「これは本当に今すぐ必要か」を、通常よりも厳しめに問い直すことをおすすめします。
土日にまとめて運用や意思決定をする働き方が多くなるため、「利用者対応に日々張り付く必要がある機能」は、複業の働き方と噛み合わないことがあります。例えば、リアルタイムのチャット対応機能などは、本業がある間は運用しきれない可能性が高く、最初はメールやフォームでの非同期対応に留める、といった判断が現実的です。
専門職としての知識をサービス化する場合
士業や特定分野の専門家が、自分の専門知識を活かしたツールを作る場合は、「専門知識の部分」と「それ以外の運用機能」を明確に分けて考えることが特に重要です。専門知識のロジック自体は、他の人には作れない核となる価値であり、ここを削ると、サービスの存在意義そのものが失われます。
一方で、専門職の方は「せっかく専門知識があるのだから、あれこれの機能も付けたい」と、周辺機能まで手厚く作り込みたくなる傾向があります。しかし、利用者管理やお知らせ配信のような一般的な機能は、専門知識とは関係のない部分であり、最初は既存ツールで代替できることがほとんどです。専門知識そのものにコストを集中させ、周辺機能への予算はできるだけ絞る、という配分が効果的です。
店舗経営者が業務改善のために立ち上げる場合
店舗経営者の場合は、すでに紙やExcel、あるいは口頭でのやり取りで日々の業務が回っている状態からスタートします。そのため、「今の業務フローの中で、本当に困っている部分はどこか」を軸に機能を絞り込むことができ、他のペルソナよりも削る判断がしやすい傾向があります。
注意したいのは、「システム化すれば全部が楽になるはず」という期待から、業務フロー全体を一度に置き換えようとしてしまうことです。最初のMVPでは、最も時間がかかっている、あるいはミスが起きやすい一部の業務だけをシステム化し、他の業務は今のやり方のまま残す、という判断が現実的です。業務全体を一度に変えるのではなく、部分的に置き換えていく発想が、予算内での立ち上げに向いています。
予算配分から逆算して機能を削る考え方
ここまでは機能そのものの重要度から仕分ける方法を紹介しましたが、もう一つの視点として、「予算をどこに配分するか」から逆算して機能を削る方法もあります。
例えば、予算300万円のうち、開発に使える金額が250万円だとします。機能ごとにおおよその開発コストの目安がわかれば、「Aに分類した機能の合計が250万円を超えていないか」を確認できます。超えている場合は、Aに分類した機能の中でも、さらに優先順位をつけ直す必要があります。
この作業を行う際は、開発会社に機能ごとの概算費用を聞いてみることをおすすめします。「予約登録機能だけでいくらか」「カレンダー表示を含めるといくら増えるか」というように、機能単位で費用感を確認できれば、予算という制約の中で、どこまでを核となる価値として残すべきかを、より具体的に判断できます。
また、開発費だけでなく、公開後の運用費(サーバー費用、外部APIの利用料など)も忘れずに考慮に入れてください。開発費を予算内に収めても、月々の運用費が想定より高くなり、結果的に運営を続けられなくなるケースもあります。機能を削る判断は、開発時点のコストだけでなく、公開後にかかり続けるコストの視点でも行う必要があります。
ケーススタディ:削りすぎて失敗した例、削らなすぎて失敗した例
機能の仕分けには、「削りすぎ」と「削らなすぎ」の両方の失敗パターンがあります。それぞれの傾向を知っておくと、自分の判断がどちらに偏っていないかを確認する材料になります。
削りすぎた例
ある個人開発者は、予算を厳しく守ろうとした結果、核となる価値に関わる機能まで削ってしまい、公開後すぐに「これでは使えない」という声を利用者から受けることになりました。具体的には、予約管理ツールで「予約のキャンセル機能」を後回しにしてしまい、利用者が予約を取り消せないという致命的な欠陥を抱えたまま公開してしまったケースです。キャンセルという行為は、予約という核となる価値と一体になっている機能であり、これを削ってしまうと、サービス全体の価値が損なわれます。予算を守ることを優先しすぎて、核となる価値の判断基準を見誤ってしまった例といえます。
削らなすぎた例
反対に、ある専門職の方は、「利用者にとって便利なはずだ」という思いから、周辺機能を数多く盛り込んだ状態で開発会社に見積もりを依頼し、予算の2倍近い金額が提示されてしまいました。結果的に、当初計画していた予算では開発に着手できず、機能を大幅に削り直すところからやり直すことになりました。最初の段階で3つの判断基準を当てはめていれば、多くの機能がB・C・Dに分類され、予算内で着手できていたはずのケースです。
この2つの例からわかるように、「削りすぎ」は核となる価値の判断を誤ることで起こり、「削らなすぎ」は判断基準を当てはめずに思いつきのまま機能を積み上げることで起こります。3つの判断基準を丁寧に当てはめる作業そのものが、両方の失敗を避けるための予防策になります。
Q&A:機能を削る際によくある疑問
Q1. 開発会社に「この機能は削りましょう」と伝えたら、失礼にならないでしょうか。
失礼にはなりません。むしろ、予算と優先順位を明確に伝えることは、開発会社にとっても見積もりや設計をしやすくする有益な情報です。「核となる価値ではないので、今回は見送りたい」という伝え方であれば、開発会社側も理由を理解しやすく、後から追加する際の相談もスムーズになります。
Q2. 一度削った機能は、もう提案してはいけないのでしょうか。
そうではありません。削った機能は「今回のMVPには含めない」という判断であり、永久に諦めるわけではありません。実際の利用者の反応やデータが集まった段階で、削った機能リストを見返し、優先順位が変わっていないかを再確認することをおすすめします。削った理由と再検討のタイミングを記録しておくと、この見直しがスムーズになります。
Q3. 4分類(A/B/C/D)に当てはめても、どうしても判断できない機能がある場合はどうすればいいですか。
判断がつかない機能は、いったん「保留」として扱い、最初のMVPには含めない方向で検討してみてください。MVPの目的は、最小限の機能で核となる価値を検証することです。判断に迷うほど優先度が明確でない機能は、多くの場合、今すぐ実装する必要のない機能です。判断に迷った時間そのものが、「今すぐでなくてもよい」というシグナルだと捉えると、決断しやすくなります。
Q4. 開発会社から「せっかくなので、この機能も一緒に作ったほうが結果的に安くなります」と提案された場合、どう考えればいいですか。
「まとめて作ったほうが安い」という提案は、実際に技術的な効率の観点から成立することもありますが、その場合でも、まず判断基準に立ち戻ってください。金額が多少安くなるとしても、その機能が核となる価値に含まれないのであれば、追加すること自体が予算とスケジュールのリスクを増やします。「安くなるから追加する」のではなく、「必要だから追加する、その上でまとめて作れるなら安くなってよい」という順序で考えることをおすすめします。判断の順序を逆にしないことが、機能を無計画に増やさないための防波堤になります。
Q5. 削った機能について、公開後の利用者にはどう伝えればいいですか。
多くの場合、削った機能について事前に説明する必要はありません。MVPは「核となる価値を検証する最小限の製品」であり、機能が少ないこと自体は欠点ではなく、意図した設計です。ただし、利用者から具体的に「この機能はないのか」と聞かれた場合は、「現在は開発中で、今後追加を検討している」という前向きな伝え方をすると、利用者の期待値を適切に管理できます。削った機能の記録(削った理由・再検討のタイミング)をあらかじめ残しておけば、こうした問い合わせにもすぐに答えられます。
まとめ:機能を削る作業は「決断力」より「基準」の問題
機能を削る場面で必要なのは、強い決断力や思い切りの良さよりも、まず判断のための明確な基準を持つことです。「核となる価値が成立するか」「今すぐ必要か」「代替できる方法があるか」という3つの基準に沿って一つひとつの機能を当てはめていけば、感覚だけに頼らずに、A・B・C・Dへ整理できます。
予算300万円という制約は厳しく感じられるかもしれませんが、機能を絞り込むことは、単に「予算に収めるための我慢」ではありません。核となる価値だけに集中したMVPを最初に作ることで、実際の利用者の反応を早く確認でき、その後の投資判断の精度も上がります。削った機能は失ったわけではなく、「今は実装しない」という前向きな選択であることを忘れずに、次のステップである開発会社との交渉や、機能仕分けの精緻化に進んでください。
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機能を削る判断ができたら、次は実際の交渉や発注の準備を進めましょう。あわせて次の記事も参考にしてください。
検証期の予算配分を全体像から確認したい場合は、アイデアを「動くもの」にする。検証期のAI試作と費用の全体像も参考になります。




