専門職と相談者をつなぐ予約サービス、自分の店で使っていた予約ツールを他の店にも開く仕組み、個人の講師が教室を出せる場。こうしたサービスを考えると、「利用者の代金をいったん運営者の口座で受け取り、手数料を引いて講師や店に渡す」という流れが自然に浮かびます。受け取りと支払いをまとめて引き受ければ、利用者は1回払うだけで済み、運営者は手数料をそこから受け取れるからです。
ただ、他人に支払われるお金を受け取って渡す行為は、法律上は「送金」に近い性質を持ちます。資金決済法は、条件によってこれを為替取引として扱い、資金移動業の登録がない事業者が行うことを認めていません。この記事では、資金決済法と資金移動業者に関する内閣府令の条文、金融庁の事務ガイドラインをもとに、代金を預かる仕組みのどこで登録の要否が分かれるのかを整理します。
先に要点をまとめます。
- 国内だけの取引で、代金を受け取る人(講師・店・専門職)が事業として受け取る場合は、資金決済法第2条の2の各号には当たりません。登録の要否は最終的に取引の中身で判断されますが、まず確認するのはこの2点です
- 代金を受け取る人が、事業ではない個人の場合は要注意です。運営者が受け取った時点で支払った人の支払い義務が消えない仕組みや、取引の成立に関わらずにお金だけを集めて渡す仕組みは、為替取引に当たります
- 個人どうしの取引でも、運営者が利用規約で取引の成立条件を定め、出品者から代金を受け取る権限を得て、契約の内容どおりに渡す形なら、対象から外れる要件があります。設計の段階で、利用規約と画面の流れをこの要件に合わせます
この記事の内容は、2026年11月3日時点でe-Govに掲載されている資金決済法・資金移動業者に関する内閣府令と、金融庁の事務ガイドライン(第三分冊:金融会社関係 14 資金移動業者関係)・公表資料に基づいています。自分の仕組みが当たるかどうかの判断は、金融庁や財務局への照会、または金融規制に詳しい弁護士への相談で確かめてください。
代金をいったん預かって渡す仕組みは、法律上どう扱われる?
債権者(代金を受け取る人)から頼まれて、支払う人からお金を受け取り、債権者に渡す仕組みを「収納代行」と呼びます。資金決済法は、そのうち一定の条件に当たるものを為替取引とみなし、資金移動業の登録がなければ営めないものとしています。
為替取引は、もともと銀行の業務です。銀行法は為替取引を行う営業を「銀行業」に含め(第2条第2項第2号)、免許なしに銀行業を営むことを禁じています(第4条第1項)。違反には3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金、またはその両方が科されます(第61条第1号)。銀行以外が為替取引を業として営めるのは、資金決済法第37条の登録を受けた資金移動業者だけです。
資金移動業者になると、利用者から預かった資金を守るための履行保証金の供託(資金決済法第43条)など、継続的な義務を負います。個人で立ち上げるサービスが、この登録を前提に設計するのは現実的ではありません。そのため、設計の段階で「自分の仕組みが為替取引に当たる形になっていないか」を確認しておく必要があります。
収納代行がどこから為替取引になるのかは、資金決済法第2条の2が定めています。条文の骨組みは次のとおりです。
| 第2条の2の各号 | 対象になる収納代行 | 外れる場合 |
|---|---|---|
| 第1号 | 受取人が個人(事業として、または事業のために受け取る場合を除く)で、内閣府令の要件を満たすもの | 内閣府令第1条の2の要件に当たらないもの |
| 第2号 | 国内から国外へ、または国外から国内へ資金を移動させるもの(2026年6月1日施行の改正で追加) | 内閣府令第1条の3が定める、利用者保護に欠けるおそれが少ないもの |
第2号は、2025年6月13日に公布された改正法(令和7年法律第66号)で加わりました。金融庁の法律案説明資料は、海外のオンラインカジノや出資金詐欺の送金に収納代行が使われていたことを背景に挙げています。
受け取る人が店や専門職なら、登録はいらない?
国内だけで完結し、受け取る人が事業として受け取るなら、第2条の2の第1号にも第2号にも当たりません。ただし、条文に当たらないことが「為替取引ではない」と確定するわけではない点に注意します。
専門職のマッチングや、他の店に開く予約ツールでは、代金を受け取るのは開業している士業、店舗、個人事業主のトレーナーなどです。これらは「事業として受取人となる」場合にあたるため、第1号の「個人」には含まれません。国内の利用者が国内の口座に支払い、国内の事業者に渡すだけなら、第2号も関係しません。
一方で、金融庁の事務ガイドライン(Ⅰ-2-1)は、第2条の2のどの号にも当たらない行為であっても、将来にわたって直ちに為替取引に当たらないという意味ではなく、最終的には取引の内容に応じて個別具体的に判断すると書いています。条文の外にあることは確認の出発点であって、結論ではありません。
次の2つに当てはまる場合は、事業者向けのサービスでも追加の確認が必要です。
- 受け取る人に、事業として受け取っていない個人が混ざる:「趣味で教えている人も講師として登録できる」「個人どうしで不用品や作品を売れる」といった設計にすると、その取引は第1号の確認対象になります
- お金が国境をまたぐ:海外の講師や店に代金を渡す、海外の決済事業者の口座を経由して受け取る、といった流れは第2号の対象になり得ます。事務ガイドライン(Ⅰ-2-2-1)は、支払う人と受け取る人がどちらも日本にいても、資金が国外の口座を経由すれば該当しうるとしています
受け取る人が個人のときは、何で分かれる?
内閣府令第1条の2が定める3つの要件のいずれかに当たると、為替取引になります。設計で確かめるのは、支払った時点で支払い義務が消えるか、そして運営者が取引の成立にどう関わっているかの2点です。
受取人が事業ではない個人の場合、内閣府令第1条の2は、次のどれかに当たる収納代行を為替取引の対象としています。
| 要件 | 内容(府令第1条の2) | 設計での読み替え |
|---|---|---|
| 第1号 | 運営者がお金を受け取った時点で、支払った人の支払い義務が消えない | 利用者が運営者に払ったのに、出品者に届くまでは「まだ払っていない」扱いになる仕組み |
| 第2号 | 貸付けなど、信用の供与で生じた債権の回収のためにお金を動かす | 立替払いや貸したお金を回収して渡す仕組み |
| 第3号 | 次のイ〜ニのどれにも当たらない | 下の4つの「外れる形」のどれでもない仕組み |
第3号のイ〜ニは、裏返すと「為替取引から外れる形」です。
- イ(エスクロー):受取人が商品やサービスを提供する義務を負っていて、その提供の前か同時に代金を受け取り、提供が終わった後に受取人へ渡す形。エスクローサービスがこれにあたります
- ロ(取引の成立に関わる運営者):運営者が、受取人の債権が生まれる契約の締結方法を定めるなど、契約の成立に不可欠な関与をし、受取人の同意のもと、契約の内容に応じて代金を渡す形
- ハ:イやロに当たらない収納代行をしている者から、さらに委託を受けて行う形でない
- ニ:銀行や資金移動業者から委託を受けて行う形でない
個人の立ち上げで当てはめると、気をつけたいのは「お金だけを集めて渡す道具」です。たとえば、サークルの会費や飲み会の代金を、幹事の代わりに運営者がまとめて受け取り、幹事個人に渡すアプリを考えます。幹事は事業として受け取っておらず、運営者は会費の約束そのものには関わっていません。この形はイにもロにも当たらないため、第3号の要件を満たし、為替取引にあたる可能性が高い設計です。
反対に、個人の講師が登録できる教室予約サービスで、運営者が利用規約で予約の成立条件やキャンセルの扱いを定め、講師から代金を受け取る権限を得て、受講後に予約の内容どおり講師に渡すなら、ロやイに当たる形に寄せられます。同じ「代金を預かる」でも、運営者が取引のルールを作っているかどうかで扱いが変わります。
「契約の成立に不可欠な関与」は、どこまでやれば当たる?
金融庁の事務ガイドラインは、委託販売者として売主を代理して契約を結ぶ場合や、多数の人が取引できる場を提供して利用規約で利用条件や取引の成立条件を定めている場合を例に挙げています。決済の方法を用意するだけ、広告や紹介をするだけでは足りないとしています。
この説明は、事務ガイドラインのⅠ-2-2-2(3)にあります。見出しは国境をまたぐ収納代行(第2号)の適用除外ですが、使われている「契約の成立に不可欠な関与」という言葉は、個人が受取人の場合の府令第1条の2第3号ロと同じです。金融庁は、2026年5月22日に公表したパブリックコメントへの回答でも、債権の売買の場を運営する者が、売買される債権そのものの契約には関与していないとして、この適用除外に当たらないと答えています。関与の対象になる契約を取り違えないことも大切です。
設計に落とすと、次の状態になっているかを確かめます。
- 利用規約に、予約・注文が成立するタイミング(申込みボタンを押した時、講師が承認した時など)と、キャンセル・返金の条件が書かれている
- 出品者・講師が、その利用規約に同意して登録している
- 運営者は、成立した予約・注文の内容に応じて代金を渡し、それ以外の理由(出品者から頼まれた別の人への振込など)では渡さない
一方、出品者どうしが個別に条件を決め、運営者は支払いリンクを発行して受け取ったお金を渡すだけ、という形は「単なる決済方法の提供」に近く、ロの関与とはいいにくくなります。
利用規約と画面には、何を入れておけばいい?
運営者が代金を受け取る権限(代理受領権)を出品者から得ていること、利用者が運営者に支払った時点で支払いが済むこと、取引の成立条件と代金を渡すタイミングを、利用規約に書いておきます。
府令第1条の2第1号は、運営者が受け取った時点で支払い義務が消えない仕組みを為替取引の対象にしています。金融庁も、国境をまたぐ収納代行の適用除外についてのパブリックコメントへの回答で、取引の成立に関わる形であっても、代理受領権が適切に付与されていなければ規制が適用されると述べています。利用規約の項目として、少なくとも次を用意します。
- 代理受領:出品者・講師は、利用者から代金を受け取る権限を運営者に与えること
- 支払いの完了時点:利用者が運営者(または運営者が指定した決済事業者)に代金を支払った時点で、利用者の出品者に対する支払いは完了すること
- 取引の成立条件:予約・注文がいつ成立するか、運営者がどの条件で取引を認めるか
- 代金を渡すタイミングと手数料:提供が終わった後に渡すのか、月末締めで渡すのか、差し引く手数料はいくらか
- キャンセル・返金:提供されなかった場合に、誰がどの順番で返金するか
利用規約全体の組み立ては利用規約に必ず入れておきたい条項で扱っています。上の5項目は、決済まわりの設計と合わせて専門家に見てもらう前提で書き出しておきます。条文の言い回しは、仕組みの実態と一致していなければ意味がありません。規約に「代理受領」と書いても、画面の流れや入金の運用が違えば判断は変わります。
決済サービスの機能を使えば、自分で考えなくて済む?
決済サービスにも、出品者や講師へ代金を分配する機能があります。ただ、代金を受け取るのが運営者なのか決済事業者なのかは、サービスと契約の形で変わります。自分の仕組みでお金が誰の口座を通るかを、決済事業者の規約で確認します。
府令第1条の2第3号ニは、銀行や資金移動業者から委託を受けて行う収納代行を、対象から外す形として挙げています。決済事業者がどの資格で、どの立場で資金を扱うかは事業者ごとに異なるため、「大手の決済サービスを使っているから大丈夫」とは言い切れません。導入前に、次の点を決済事業者の規約やサポートで確かめます。
- 利用者が支払った代金は、いったん運営者の口座に入るのか、決済事業者から出品者へ直接渡るのか
- 出品者側にも、決済事業者のアカウント登録や本人確認が求められるか
- 個人(事業者でない人)が受け取る側になる使い方が認められているか
決済サービスを比べる基準は個人が決済機能を導入するとき、何を基準に選ぶべきかにまとめています。マッチング要素のあるサービスは決済の審査で慎重に見られることもあるため、決済サービスの審査に通るための準備も先に読んでおくと、申込みの段階で説明する内容がそろいます。
店や講師が売る場をつくると、ほかに何が関わる?
事業者が消費者に売る場を提供すると、取引デジタルプラットフォーム消費者保護法の対象になり得ます。メッセージ機能を付ける場合は電気通信事業の届出、前払いのポイントを売る場合は資金決済法の別の規制も確認します。
取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益の保護に関する法律は、消費者が事業者(販売業者等)にオンラインで申し込める場を事業として提供する人を「取引デジタルプラットフォーム提供者」と定めています(第2条)。提供者には、消費者が売り手と連絡を取れるようにする措置、表示への苦情を受けたときの調査、売り手に所在などの情報の提供を求める措置などに取り組む努力義務があります(第3条第1項)。消費者は、売り手に対する1万円を超える金銭の支払いを求める権利を行使するために必要な場合、提供者に売り手の氏名・住所などの開示を請求できます(第5条第1項、同法施行規則第4条)。売り手の連絡先を登録時に確認しておく設計は、この請求に応える準備にもなります。
利用者どうしがメッセージをやり取りできる機能を付けるなら、メッセージ機能・マッチングで分かれる電気通信事業の届出の判断を確認してください。回数券やチャージ式のポイントを前売りする場合は、収納代行とは別の前払式支払手段の規制になります。こちらはポイント・回数券は資金決済法の対象かで扱っています。
設計を固める前に、何を決めておけばいい?
代金を受け取る人の範囲、お金の流れる口座、運営者が取引のルールをどこまで決めるか、代金を渡すタイミングの4つを先に決め、図にしてから専門家や決済事業者に相談します。
次の項目を書き出しておくと、照会や相談の場で話が早く進みます。
- 受け取る人の範囲:開業している事業者だけか、事業ではない個人も登録できるか
- お金の流れ:利用者の支払い先(運営者の口座、決済事業者)、出品者への支払い元、海外の口座を通るか
- 取引のルール:予約・注文の成立条件、キャンセル・返金の条件を、運営者の利用規約で決めるか、出品者どうしに任せるか
- 代金を渡すタイミング:提供の前か後か、締め日と支払日、手数料の差し引き方
- 利用規約の該当条項:代理受領、支払いの完了時点、成立条件、返金の5項目
- ほかの規制:メッセージ機能、前払いのポイント、売り手の情報開示への備え
他の店に開く予約ツールのように、もともと自分用に作った仕組みを広げる場合は、展開するかどうかの判断を自分の店のために作ったツール、他店にも展開できるか判断する視点で先に済ませておくと、お金の流れを考える範囲が絞れます。
まとめ:代金を預かるなら、受け取る人と取引のルールを先に決める
- 代金をいったん受け取って他人に渡す仕組みは、条件によって為替取引にあたり、資金移動業の登録がないと営めません。無登録で為替取引を営むと銀行法違反になります
- 国内だけで、受け取る人が事業として受け取るなら、資金決済法第2条の2の各号には当たりません。ただし最終的な判断は取引の中身によります
- 受け取る人に事業ではない個人が含まれる場合は、支払った時点で支払いが済むこと、運営者が利用規約で取引の成立に関わっていること(またはエスクローの形)を設計で満たします
- お金が国境をまたぐ流れは、2026年6月1日施行の改正で新たに対象になりました
- 決済サービスの分配機能を使う場合も、お金が誰の口座を通るかを規約で確かめます
いま考えている仕組みについて、利用者・運営者・出品者の3者の間でお金がどの口座を通るかを1枚の図にしてください。その図と利用規約の案を持って、金融庁・財務局への照会や弁護士への相談に進むと、判断に必要な情報がそろいます。




