公開したばかりのサービスには、まだ口コミがありません。予約サイトやGoogleマップのクチコミ欄が空のままだと、初めて見る人は判断の手がかりがなく、利用をためらいます。そこで「使ってくれた人に感想を書いてもらおう」「書いてくれたら次回割引にしよう」「知り合いに頼んでおこう」と考えたとき、気になるのが2023年10月に始まったステマ規制です。
ステマ規制は、景品表示法第5条第3号にもとづく内閣府告示(令和5年内閣府告示第19号)で、2023年10月1日に施行されました。対象は大企業の広告に限らず、自分のサービスについて表示をする事業者全般です。この記事では、消費者庁の運用基準(2023年3月28日 消費者庁長官決定)とステマ規制のQ&A、規制の第1号となった措置命令をもとに、口コミのお願いがどこから「広告」として表示しなければならない投稿になるのかを、頼み方ごとに整理します。
先に要点をまとめます。
- 口コミを書いてもらうこと自体を条件にした割引やクーポンは、内容を指定しなければ、通常は景品表示法上の「事業者の表示」に当たりません。「星5を付ける」「おすすめと書く」など内容を条件にすると、事業者の表示になり、「広告」「PR」などの表示が必要です
- 特定の知人や同業者を選んで無料で使ってもらい、投稿をお願いする場合は、やり取りや今後の取引の関係によって事業者の表示と判断されることがあります。迷ったら、投稿に「〇〇から無料提供を受けて投稿しています」と書いてもらうのが確実です
- 景品表示法で問題にならない頼み方でも、Googleのクチコミの規約は、割引や無料サービスと引き換えのクチコミを禁止しています。法律と掲載先の規約は別々に確認します
この記事の内容は、2026年10月13日時点で消費者庁のウェブサイトに掲載されている告示・運用基準・Q&A・公表資料に基づいています。個別の頼み方が該当するかの判断に迷う場合は、消費者庁の表示対策課や弁護士に確認してください。
ステマ規制は、誰の・どんな投稿が対象になる?
対象は、事業者が自分の商品やサービスについて行う表示のうち、事業者の表示なのに第三者の感想のように見えるものです。規制を受けるのは依頼した事業者(広告主)で、依頼を受けて投稿した人は対象外です。
運用基準は、告示の対象を「事業者の表示であるにもかかわらず、第三者の表示のように見えるもの」と説明しています。広告だと分かっていれば、読む人は多少の誇張を割り引いて受け取ります。第三者の感想だと思って読むと、その割引きがはたらきません。そのため、事業者の表示であることを隠した投稿は、利用者の選択をゆがめる不当な表示として扱われます。
個人で始めるサービスに当てはめると、次の点を押さえておけば足ります。
| 論点 | 運用基準・Q&Aの整理 |
|---|---|
| 規制を受ける人 | 表示の内容の決定に関与した事業者(広告主)。依頼を受けて投稿したインフルエンサーやアフィリエイターは対象外(Q&A Q1) |
| 個人事業主も対象か | 景品表示法第2条第1項の「事業者」(事業を行う者)が行う表示が対象。個人で有料のサービスを提供していれば、自分のサービスの表示は対象になる |
| そもそも対象外のもの | 自分のサイト、自分のSNSアカウントでの発信など、事業者の表示であることが明らかなもの(運用基準第3・2⑵) |
| 違反したとき | 消費者庁が、表示の取りやめ・誤認の排除・再発防止などを命じる「措置命令」を行う。課徴金の対象にはならない(Q&A Q2。ただし内容に優良誤認・有利誤認が含まれる場合は課徴金の対象になりうる) |
自分のサイトで「うちのサービスはこんなに便利です」と書くのは、ステマ規制の対象ではありません。問題になるのは、口コミサイトや他人のSNSなど、第三者の場所に出る投稿の中身を自分が決めているのに、それが分からない状態です。
口コミのお願いに割引やクーポンを付けてもいい?
内容を指定しなければ、投稿すること自体を条件に割引やクーポンを付けても、通常は事業者の表示に当たりません。星の数やおすすめの言葉など、内容を条件にした時点で事業者の表示になります。
消費者庁のQ&Aは、口コミのお願いについて次のように整理しています。
| 頼み方 | 景品表示法上の扱い | 根拠 |
|---|---|---|
| 利用後に予約サイトへ口コミを書くことを条件に、割引価格で提供する(内容の指示なし) | 通常、事業者の表示に当たらない | Q&A Q6前段 |
| 口コミで「星5」を付けることを条件に割引する | 事業者の表示に当たる。表示しなければ違反 | Q&A Q6後段 |
| 品質や価格などを推奨するコメントを書くことを条件にする | 同上 | Q&A Q6後段 |
| 購入者がレビューを書いたら、次回使えるクーポンを渡す(内容の指示なし) | 通常、事業者の表示に当たらない | Q&A Q7 |
| ハッシュタグを付けて感想を投稿した人から抽選でプレゼント(内容の指示なし、投稿内容が抽選に影響しない) | 通常、事業者の表示に当たらない | Q&A Q8前段 |
| 「#毎日食べたい美味しさ」など具体的な感想のハッシュタグを応募条件にする | 事業者の表示に当たる | Q&A Q8後段 |
分かれ目は、対価の有無ではなく、事業者が投稿の中身を決めているかどうかです。Q6前段は、割引程度の対価で、口コミの内容に指示がないことを理由に、事業者が表示内容の決定に関与しているとはいえないと説明しています。
規制の第1号となった措置命令も、内容の条件付けが決め手でした。消費者庁は2024年6月6日、医療法人社団祐真会に措置命令を行いました。公表資料によると、同法人の診療所は、インフルエンザワクチンの接種に来た人に対し、Googleマップのクチコミ欄に星5か星4の投稿をすることを条件に接種費用を割り引くと伝え、それによって投稿されたクチコミが、事業者の表示であることが明瞭でない表示と認定されています。
もう1つ、口コミを書いた後の修正依頼にも線があります。Q&A Q9は、実際には存在しない機能が書かれているなど客観的な事実に反するレビューや、他社の名誉を傷つけるレビューの修正を頼むだけなら、事業者の表示には当たらないとしています。一方、利用者が書いた感想や評価を自分に都合のよい内容に直すよう頼めば、修正後のレビューは事業者の表示に当たります。
知人や同業者に投稿をお願いするときは?
特定の相手を選んで無料で使ってもらい、投稿をお願いする場合は、やり取りの内容や今後の取引の見込みによって、事業者の表示と判断されることがあります。その場合は、投稿の本文に事業者の表示であることを分かりやすく書いてもらいます。
立ち上げ直後は、本業の常連客、同業の知り合い、勉強会の仲間に「使ってみて、よかったら感想を投稿して」とお願いすることが多いはずです(既存のつながりへの告知の進め方は既存の顧客・同業者ネットワークに告知する方法を参照)。Q&Aは、街頭で不特定の人に試供品を配って「よろしければ感想をSNSに」と声をかける場合は、通常は事業者の表示に当たらないとしています(Q4)。一方、特定のインフルエンサーを選んで無料で提供し、投稿をお願いする場合は、やり取りの内容、提供したものの内容と目的、過去や今後の取引の有無によって、事業者の表示に当たる場合があるとしています(Q5)。
運用基準は、明示的に頼んでいなくても、対価を感じさせたり、今後の取引に触れたりした結果として投稿が行われた場合も、事業者の表示になりうるとしています。対価には、お金や物だけでなく、イベントへの招待など「対価性を有する一切のもの」が含まれます。
知り合いに頼むときに、何が判断に効くかを整理すると次のとおりです。
- 投稿してもらう内容(褒めてほしい点、使ってほしい言葉)を伝えていないか
- 無料提供や割引が、投稿してもらうことを目的にしたものか
- 投稿してくれたら今後の仕事や紹介につながる、と受け取られる関係ややり取りがないか
- 同じ相手に、続けて対価を渡して投稿してもらう関係になっていないか
これらに当てはまるなら、投稿は事業者の表示として扱う前提で準備します。表示の方法は、運用基準が「広告」「宣伝」「プロモーション」「PR」という文言や、「A社から商品の提供を受けて投稿している」といった文章を例に挙げています。Q&Aは、表示の位置についても次のように説明しています。
| 表示のしかた | Q&Aの整理 |
|---|---|
| 「〇〇(サービス名)から無料提供を受けて投稿しています」と本文に書く | 適切な方法の例(Q11、運用基準第3・2⑴イ) |
| 「私は〇〇の社員です」と所属だけを書く | それだけで明瞭とは必ずしもいえない(Q12) |
| 本文ではなく、ツリー(リプライ)に「広告」と書く | 通常、明瞭とはいえない(Q14) |
| 動画の冒頭だけに短く表示する | 見逃されやすい。動画全体を通じた表示が望ましい(Q15) |
| 大量のハッシュタグの中に「#PR」を紛れ込ませる | 他の情報に紛れ込ませる例として、不明瞭な表示に当たる(運用基準第3・1⑵ク) |
お願いする側が用意できるのは、表示の文例です。「〇〇(サービス名)を無料で試させてもらい、感想を書いています」のような一文を依頼の連絡に添えておくと、相手は迷わずに書けます。表示を求めると頼みにくい、と感じる場合は、内容を指定せず、対価も付けない頼み方にとどめます。
自分や家族、共同運営者が投稿してもいい?
運営している本人が、利用者のふりをして口コミを書くのは、事業者が自ら行う表示を第三者の表示のように見せるものです。共同運営者や販売を担う人の投稿も、事業者の表示として扱われます。
運用基準は、事業者が自ら行う表示に「事業者が自ら表示しているにもかかわらず第三者が表示しているかのように誤認させる表示」を含めています。個人で運営していると、自分の別アカウントで感想を書いて最初の1件を埋めたくなることがありますが、これはまさにこの類型です。
従業員の投稿についても、Q&A Q3は、商品の販売を促進する立場にある人(販売や開発を担う役員、管理職、担当チームの一員など)が販売促進のために投稿すれば事業者の表示に当たるとしています。ひとりで始めたサービスでも、一緒に運営している共同創業者や、集客を担当してもらっている人の投稿は、この立場にあたると考えて、投稿に関係を明記してもらうのが安全です。
家族や親しい友人については、運用基準・Q&Aに直接の例はありません。前の章の判断材料(内容の指定、対価、今後の関係)をそのまま当てはめ、運営に関わっている、または投稿をお願いしているのであれば、関係が分かる一文を入れてもらいます。
サイトに「お客様の声」を載せるときは?
自分のサイトに利用者の感想を載せること自体は問題ありません。ただし、好意的なものだけを選んだり、悪い点を省いたりして載せる場合は、事業者の表示であることを明瞭にする必要があります。
運用基準は、事業者のサイトの一部で第三者の投稿を使う場合でも、恣意的に抜き出したり内容に手を加えたりせず、そのまま引用するのであれば、その部分は事業者の表示に当たらないとしています。Q&A Q10は、アンケートの回答から無作為に選んで載せる場合は事業者の表示に当たらず、好意的な評価だけを選ぶ場合や、「良い点」「悪い点」のうち良い点だけを引用する場合は事業者の表示に当たるとしています。
ランディングページ(LP)に感想を載せるなら、次のどちらかに決めておきます。
- 集めた感想をそのまま、選別せずに載せる(件数が増えたら、無作為に選ぶ方法を決めておく)
- 選んで載せる。その場合は、「当サービスにお寄せいただいた感想から、運営者が選んで掲載しています」のように、選んでいることが分かる表示を感想のそばに置く
感想を載せる前には、掲載してよいかを本人に確認しておきます。利用規約やアンケートの画面で、掲載の可能性と、名前の出し方(匿名、イニシャル、業種のみ)を先に示しておくと、確認の手間が減ります。
景品表示法で問題なくても、Googleの規約では禁止されている?
禁止されています。Googleのクチコミの規約は、内容を指定しない場合も含めて、割引や無料の商品・サービスなどのインセンティブと引き換えにクチコミを依頼すること自体を禁止しています。
Googleマップのユーザー投稿コンテンツに関するポリシーは、「虚偽のエンゲージメント」として、クチコミの投稿や否定的なクチコミの修正・削除と引き換えに、金銭的報酬、割引、無料の商品やサービスなどのインセンティブを提供する行為を禁止しています。現在または過去の雇用関係・契約関係にある人によるクチコミも、利益相反として禁止対象に挙げています。
つまり、消費者庁のQ&A Q6で「通常、事業者の表示に当たらない」とされる「口コミを書いたら割引」も、掲載先がGoogleマップなら規約違反になります。予約サイトやアプリストアなど、他の掲載先にも独自の規約があります。口コミを集める場所を決めたら、その場所の投稿ルールで、対価と引き換えの依頼が認められているかを確認してください。
規約上、対価を付けられない場所では、利用の直後に「よろしければ感想をお聞かせください」と投稿先のリンクを案内するだけにします。感想を集める仕組みそのものは、ユーザーの声を集める仕組みを先に作っておくと、口コミ欄に書いてもらう前に、改善に使える声を手元に残せます。
公開前に決めておくことは?
口コミを集める場所、頼み方(対価を付けるか、内容を指定しないか)、知人に頼む場合の表示の文例、お客様の声の載せ方の4つを、公開前に決めておきます。
次の項目を書き出しておくと、公開直後に慌てて頼み方を考えずに済みます。
- 口コミを集める場所:Googleマップ、予約サイト、アプリストア、SNS、自分のサイトのどれか。それぞれの規約で、対価と引き換えの依頼が認められているか
- 対価を付けるか:付ける場合、内容(星の数、おすすめの言葉、使ってほしいハッシュタグ)を一切指定しない文面になっているか
- 知人・同業者に頼む場合:誰に頼むか、無料提供の有無、投稿に入れてもらう一文(「〇〇から無料提供を受けて投稿しています」など)
- 自分や共同運営者の発信:自分のアカウントで、運営者として発信する。利用者のふりをした投稿はしない
- お客様の声の掲載:選別せずに載せるか、選んで載せて表示するか。掲載の同意の取り方
- 修正のお願いの範囲:事実と違う記載、他社を傷つける記載の修正だけを頼む。感想や評価の書き換えは頼まない
口コミ以外の公開後の集客、たとえば紹介コードや招待リンクの設計は、使ってくれているユーザーに口コミしてもらうための工夫で扱っています。特典の金額や景品の上限は、ステマ規制とは別の景品規制の論点になるため、高額な特典を付ける場合は消費者庁の景品規制の資料で確認してください。資格を持つ専門職の場合は、景品表示法とは別に業法上の広告規制がかかることもあり、士業・専門職がサービスを作る際の業法上の制約もあわせて確認しておくと安心です。
まとめ:口コミは「内容を決めない」頼み方を基本にする
- ステマ規制の対象は、事業者が内容を決めているのに第三者の感想に見える投稿です。規制を受けるのは頼んだ事業者で、個人のサービスも対象です
- 口コミを書くことだけを条件にした割引・クーポンは、内容を指定しなければ通常は対象外です。星の数やおすすめの言葉を条件にすると「広告」「PR」などの表示が必要になります
- 特定の知人に無料で使ってもらって投稿を頼むときは、投稿の本文に、提供を受けたことが分かる一文を入れてもらいます
- 運営している本人や共同運営者が利用者のふりをして書くのは、事業者の表示を第三者の表示に見せるものです
- 景品表示法で問題がなくても、Googleマップは対価と引き換えのクチコミ依頼を禁止しています。掲載先の規約も確認します
いま考えている口コミのお願いの文面を書き出して、内容を指定する言葉が入っていないか、掲載先の規約で対価を付けられるかを確かめてください。判断に迷う頼み方があれば、文面と掲載先を添えて、消費者庁の表示対策課や弁護士に相談してください。




