専門知識を活かしたツールを作る際、「このツールに、どれくらいの需要があるのか」という見通しを持てないまま進めてしまうことがあります。この記事では、想定読者数・利用頻度を、自分の専門分野の人脈から逆算する方法を解説します。

この記事で分かること

専門知識を活かしたツールの需要は、大規模な市場調査をしなくても、自分自身の専門分野のネットワークを起点にすることで、ある程度の見通しを立てることができます。この記事では、その逆算の手順を紹介します。

結論を先に示すと、逆算の手順は次の3つです。

  • 自分の専門分野の人脈の規模を、まず把握する
  • その中で、実際に興味を持ちそうな人の割合を見積もる
  • さらにその中で、実際に使い続けてくれる割合を、慎重に見積もる

なぜ、この3段階に分けて考える必要があるのでしょうか。専門知識を活かしたツールを個人・複業で作る場合、開発費や運用費は限られた予算の中でやりくりする必要があります。「なんとなく需要がありそうだから作ってみる」という進め方をしてしまうと、実際に公開したあとに「思ったより使ってくれる人が少ない」という結果に直面し、時間とお金を投じたあとで軌道修正を迫られることになります。

一方で、需要の見通しを立てるために大規模な市場調査会社に依頼したり、何百万円もかけてアンケート調査を実施したりするのは、個人・複業の立場では現実的ではありません。そこで役に立つのが、「自分自身がすでに持っている専門分野の人脈」を起点にした逆算です。すでに存在する人脈という手元のデータを使って、ゼロからではなく「そこそこの精度」の見通しを、コストをかけずに立てられるのがこの方法の強みです。

人脈の規模を把握する、興味を持ちそうな人の割合を見積もる、使い続けてくれる割合を見積もるという3段階で需要を絞り込んでいく逆算ステップを、幅が狭くなる3本の横棒で表した図解

手順1:自分の専門分野の人脈の規模を、まず把握する

最初のステップは、自分が持っている専門分野の人脈の規模を、具体的な数字で把握することです。同業者のコミュニティに何人参加しているか、SNSでのフォロワー数、過去の顧客・相談者の人数など、把握できる範囲で数字を書き出してみてください。

この段階では、正確な数字である必要はありません。おおまかな規模感をつかむことが目的です。

人脈の規模を洗い出すときの具体的な項目

実際に数字を書き出す際は、次のような項目に分けて整理すると、規模感をつかみやすくなります。

  • 業界団体・勉強会の参加者数:定期的に顔を合わせるコミュニティの人数
  • SNSのフォロワー・つながり数:X(旧Twitter)、Facebook、LinkedInなど、専門分野の話題で反応してくれる層
  • 過去の顧客・相談者の人数:実際に自分のサービスや助言を受けたことがある人の総数
  • メールマガジン・LINE公式アカウントの登録者数:すでに連絡が取れる状態にある人の数
  • オンラインコミュニティ・Slack/Discordのメンバー数:専門分野に関心を持って集まっている人の数

これらを足し合わせると、重複を含んだ「延べ人数」になりますが、まずはこの延べ人数を出すことが第一歩です。重複の調整は、次のステップ以降で自然と反映されていきます。

規模が小さすぎる場合の考え方

「自分の人脈は数十人しかいない」という場合でも、落ち込む必要はありません。人脈が小さい場合は、その分、後述する専門分野を超えた広がりに期待する比重を大きくする、あるいは人脈を広げる活動(勉強会への参加、SNSでの発信強化など)を並行して進める、という選択肢があります。逆算の目的は「今の人脈だけで事業が成立するかを判定する」ことではなく、「現時点での目安を持ち、次の一手を考えるための材料にする」ことです。

手順2:その中で、実際に興味を持ちそうな人の割合を見積もる

次に、その人脈の中で、実際に自分のツールに興味を持ちそうな人の割合を見積もります。これは、専門分野の人脈といっても、全員が同じ課題を抱えているわけではないため、割合として考える必要があります。

例えば、100人の同業者ネットワークがあるとして、その中で自分が作ったツールが解決する課題を実際に抱えている人が、どれくらいの割合かを考えます。この見積もりは、実際に何人かに直接ヒアリングしてみることで、より精度の高いものになります。ユーザーインタビューの進め方については、別記事で詳しく解説しています。

割合を見積もる際に陥りやすい失敗パターン

この段階で個人開発者が陥りやすい失敗パターンを、いくつか紹介します。

失敗パターン1:「みんな困っているはず」という思い込みで高い割合を設定してしまう

自分自身がその課題に強く困っている場合、「同業者もきっと同じように困っているはずだ」と考えてしまいがちです。しかし、同じ業界・同じ職種であっても、業務のやり方や環境、抱えている優先課題は人によって大きく異なります。自分が強く感じている課題を、他の人も同じ強度で感じているとは限りません。

失敗パターン2:SNSでの「いいね」やコメントの数を、そのまま興味を持つ人数として扱ってしまう

SNSで課題について発信した際に、多くの「いいね」やコメントがついたとしても、それがそのまま「ツールを使いたい人の数」に直結するわけではありません。「いいね」は共感や関心の表明であり、実際の行動(ツールを使う、お金を払う)とは別のレイヤーにあります。

失敗パターン3:一人からの強い反応を、全体の割合に拡大してしまう

「知り合いの一人がすごく欲しいと言っていた」という体験は、モチベーションを高めてくれる一方で、それを根拠に「きっと多くの人が同じように思っているはずだ」と割合を高く見積もってしまうことがあります。一人の強い反応は、あくまでサンプル数1の情報として扱い、実際の割合の見積もりには慎重に反映させる必要があります。

割合の見積もり精度を上げる具体的な方法

これらの失敗を避けるために、次のような具体的な方法を組み合わせることをおすすめします。

  1. 直接ヒアリングを最低5〜10人に行う:SNSでの発信だけでなく、個別に連絡を取り、じっくり話を聞く機会を作ります。
  2. 「はい/いいえ」で終わらない質問をする:「困っていますか」という質問だけでなく、「その課題に対して、今どうやって対処していますか」「そのために時間やお金をどれくら使っていますか」といった深掘りの質問をすることで、課題の深刻度が見えてきます。
  3. 異なる属性の人に聞く:同じ勉強会の常連メンバーだけでなく、普段あまり接点のない層にも聞いてみることで、人脈全体における割合のばらつきを把握できます。

手順3:さらにその中で、実際に使い続けてくれる割合を、慎重に見積もる

3つ目のステップは、「興味を持つ人」と「実際に使い続けてくれる人」を区別することです。興味を持ってくれても、実際に使い始め、継続的に使ってくれる人は、さらに少ない割合になります。

この割合は、一般的なサービスの継続利用率の目安を参考にしつつ、慎重に(低めに)見積もることをおすすめします。楽観的な見積もりをすると、実際の収益や利用者数が想定を大きく下回り、資金計画に狂いが生じる可能性があります。

「興味」と「継続利用」の間にある壁

興味を持った人が実際に使い続けるまでの間には、いくつかの壁が存在します。

  • 登録の壁:興味を持っても、実際にアカウントを作って使い始めるまでには、一定の心理的・時間的なハードルがあります。
  • 習慣化の壁:一度使ってみても、日常の業務フローに組み込まれなければ、次第に使われなくなっていきます。
  • 支払いの壁:無料の間は使い続けても、有料化したタイミングで離脱する人が一定数います。

これらの壁を踏まえると、「興味を持った人」のうち「実際に使い続けてくれる人」の割合は、一般的に決して高くないことを前提に見積もる必要があります。業種やツールの性質によって差はありますが、慎重な見積もりを心がけることで、後から資金計画が崩れるリスクを減らせます。

慎重に見積もることの意味

「慎重に見積もる」というのは、単に数字を小さくすることではありません。以下のような考え方で数字を決めることを指します。

  • 楽観的な予測と悲観的な予測の両方を出し、悲観的な予測を基準に資金計画を立てる
  • 「もし継続利用率が想定の半分だったら、事業として成立するか」を事前に検証しておく
  • 過去に似たようなツール・サービスを利用した経験がある場合、そのときの自分自身の継続利用の感覚も参考にする

具体的な逆算の例

仮に、専門分野の人脈が200人おり、そのうち20%(40人)が自分のツールが解決する課題を抱えているとします。さらに、その40人のうち、実際に使い続けてくれる人が30%(12人)だとすると、想定される利用者数は12人程度になります。

この12人という数字が、価格設定や、事業として成立するかどうかの判断材料になります。月額課金であれば、12人×月額料金が、想定される月々の収益の目安になります。この収益が、運用費やかけた時間に対して十分な水準かどうかを、価格設定を検討する際の基準にすることができます。

人脈200人と人脈50人の2つのケースで、興味を持つ人の割合20%、継続利用する割合30%を掛け合わせた結果、想定利用者数がそれぞれ12人・3人になる逆算の計算過程を円と矢印で対比した図解

別のケースで考える:人脈が小さい場合

人脈の規模が小さい場合の例も見てみましょう。専門分野の人脈が50人しかいない場合、同じ20%・30%という割合を当てはめると、興味を持つ人が10人、実際に使い続ける人が3人という計算になります。

3人という数字だけを見ると、「事業として成立しない」と感じてしまうかもしれません。しかし、この3人がしっかりとお金を払い続けてくれる価値の高いツールであれば、価格設定を工夫することで十分に採算が取れる場合もあります。例えば、月額1万円のプロフェッショナル向けツールであれば、3人でも月3万円の収益になります。人数が少ない場合は、「人数を増やす」方向と「単価を上げる」方向の両方を検討する余地があるということです。

別のケースで考える:継続利用率が高いツールの場合

逆に、ツールの性質によっては継続利用率が高くなるケースもあります。例えば、毎日の業務で必ず使う定型作業を自動化するようなツールであれば、一度使い始めた人の継続利用率は高くなりやすい傾向があります。このような場合は、興味を持った人のうち使い続ける割合を、他のケースよりも高めに見積もっても、比較的妥当な想定になることがあります。

重要なのは、ツールの性質(毎日使うものか、たまに使うものか、代替手段がすでにあるかどうか)を踏まえて、継続利用率の見積もりを調整することです。

逆算した数字を、そのまま信じすぎない

この逆算の手順は、あくまで見通しを立てるための目安であり、実際の結果は、この数字と大きく異なることもあります。逆算した数字を出発点として、実際にMVP(実用最小限の製品)を公開し、実際の反応を確認しながら、見通しを更新していくことをおすすめします。

数字が想定より少なかった場合は、価格設定や機能の見直しを検討する材料になります。逆に、想定より多かった場合は、より積極的な展開を検討する良い機会になります。

逆算はあくまで「仮説」であるという意識を持つ

逆算で得られた数字は、あくまで仮説にすぎません。この仮説を検証するプロセスこそが、MVPを公開する本来の目的です。逆算の数字を「正解」だと思い込んでしまうと、実際の反応が想定と異なった際に、必要な軌道修正を怠ってしまう可能性があります。

逆算の数字は、「この程度の見通しがあるなら、まず作ってみる価値がある」という、着手の判断材料として使うのが適切です。公開後は、実際のアクセス数、登録数、継続利用率といった実測データに基づいて、仮説を随時更新していく姿勢が求められます。

専門分野を超えた広がりの可能性も、考慮する

専門分野の人脈からの逆算は、あくまで最初の目安です。実際にツールを公開した後、専門分野以外の人にも需要が広がる可能性もあります。同業者の人脈だけに限定して需要を判断しすぎず、公開後の実際の反応も踏まえて、想定を更新していく柔軟さを持つことをおすすめします。

例えば、特定の専門職向けに作ったツールが、SNSでの紹介や口コミによって、隣接する業種の人にも使われるようになるケースは珍しくありません。専門分野の人脈からの逆算は「最低限このくらいの需要は見込める」という下限を確認するための手法であり、それ以上の広がりを否定するものではない、という点を意識しておくとよいでしょう。

見積もりの精度を上げる、追加の工夫

逆算した数字の精度を上げるためには、可能であれば、専門分野の人脈の中で、実際にアンケートやヒアリングを行うことをおすすめします。「このようなツールがあったら使いたいと思いますか」という簡単な質問を、SNSやコミュニティで投げかけてみるだけでも、実際の反応を確認できます。

この際、好意的な反応をそのまま信じすぎないことも重要です。「良いと思う」という反応と、「実際にお金を払って使う」という行動には、大きな差があることがよくあります。可能であれば、「実際に使ってみたいですか」だけでなく、「これに月額いくらなら払いたいですか」といった、より具体的な質問をすることで、より実態に近い見通しが得られます。

事前登録リストを作って、興味の温度を測る

アンケートよりも一歩進んだ方法として、公開前に「事前登録リスト」を作る方法があります。「完成したらお知らせします」というシンプルなランディングページ(LP)を用意し、メールアドレスやLINEの登録を募ることで、実際にどれくらいの人が「連絡を待ってもよい」と思うほどの興味を持っているかを測ることができます。

事前登録の数は、SNSでの「いいね」よりも一段階、実際の利用意欲に近い指標になります。登録には多少の手間がかかるため、それでも登録してくれる人は、興味の温度がある程度高いと判断できます。

「お金を払ってもいい」という意思表示を事前に確認する

さらに精度を上げるためには、公開前に少額の予約金や、早期割引価格での事前購入を募る方法もあります。実際にお金を払ってもらうという行為は、アンケートの回答よりもはるかに強い需要のシグナルです。ただし、この方法はツールがまだ存在しない段階で実施するため、誠実な説明と、実現できなかった場合の返金対応など、事前に整理しておくべき点があります。

逆算の結果が、想定より小さかった場合

逆算した結果、想定される利用者数が非常に少ない(数人程度)場合、それは事業として成立しないという意味ではなく、まずは小規模な範囲で価値を検証する段階だと捉えることをおすすめします。

小規模な利用者からのフィードバックを踏まえて、ツールを改善し、専門分野を超えた展開の可能性を探る、という段階的なアプローチも現実的です。最初から大きな数字を求めすぎず、まずは目の前の少数の利用者に、確実に価値を届けることを優先してください。

小規模な検証から始めることのメリット

利用者数が少ないことは、必ずしもデメリットだけではありません。少人数であれば、一人ひとりの利用状況やフィードバックを丁寧に追うことができ、ツールの改善サイクルを速く回すことができます。大規模な利用者を抱えてから改善しようとすると、変更の影響範囲が大きくなり、慎重な対応が必要になります。少人数のうちに試行錯誤を重ねておくことは、後の展開にとって有利に働くことが多いです。

チェックリスト:逆算した数字を評価する際の確認項目

逆算した数字が出たあと、その数字をどう評価すればよいか迷う場合は、次のチェックリストを参考にしてください。

  • 人脈の規模は、直近のデータ(フォロワー数や参加者数)に基づいているか。古い情報のまま計算していないか
  • 「興味を持ちそうな人」の割合は、実際のヒアリング結果を踏まえているか。それとも印象だけで決めていないか
  • 「使い続けてくれる人」の割合は、楽観的すぎないか。悲観的なケースも計算してみたか
  • 想定利用者数×価格の収益は、開発・運用にかけた時間やコストに対して妥当な水準か
  • 専門分野を超えた広がりの可能性を、過大に期待していないか(あくまで人脈からの数字を基準にしているか)
  • 数字が小さかった場合に、「事業として成立しない」と早計に判断していないか

業種別に見る、逆算のバリエーション

専門分野の人脈からの逆算は、業種やツールの性質によって、それぞれ意識すべきポイントが変わってきます。ここでは、いくつかの具体的なケースを想定して、逆算の考え方の違いを見ていきましょう。

コンサルタント・士業など、顧問先が明確な専門職の場合

税理士、社会保険労務士、中小企業診断士など、顧問先という形で継続的な関係を持つ専門職の場合、人脈の規模は比較的把握しやすい傾向にあります。過去・現在の顧問先の数、勉強会や業界団体での知り合いの数など、名簿としてすでに手元にあることが多いためです。

このケースでは、「顧問先が抱えている業務課題のうち、自分のツールで解決できる課題を持つ割合」を見積もることが中心になります。顧問先ごとに業務内容や規模が異なるため、一律の割合ではなく、顧問先を業種・規模別にグループ分けし、グループごとに割合を見積もると、より精度の高い逆算になります。

エンジニア・デザイナーなど、SNS発信が中心の専門職の場合

エンジニアやデザイナーのように、SNSやブログでの発信を通じて人脈を広げているケースでは、フォロワー数という「見えやすい数字」が大きくなりがちです。しかし、フォロワー数の多さと、実際にツールを使ってくれる人の多さは、必ずしも比例しません。

このケースでは、フォロワー数そのものよりも、「実際に自分の発信に反応してくれる人(いいね・コメント・DMなどのエンゲージメントがある人)」を人脈の実質的な規模として捉えるほうが、逆算の精度が上がります。フォロワー数が1万人でも、実際にエンゲージメントがあるのが100人程度であれば、逆算の起点は100人として考えるべきです。

医療・福祉など、対面の関係性が中心の専門職の場合

医療従事者や福祉関係者のように、対面での関係性が中心となる専門職の場合、SNSでの人脈拡大よりも、勉強会・研修会・職能団体での人脈が中心になります。この場合、人脈の規模自体はそれほど大きくならないことが多いですが、専門性への信頼度が高いため、興味を持った人が実際に使い続けてくれる割合は、他の業種よりも高くなる傾向があります。

人脈の「広さ」よりも「深さ」を重視し、少数でも確実に使い続けてくれる利用者を丁寧に開拓していくアプローチが向いているケースです。

逆算の結果を、実際の事業計画にどう反映するか

逆算で得られた想定利用者数は、単に「需要があるかないか」を判断するためだけでなく、その後の事業計画全体に反映させることで、より実践的な材料になります。

開発する機能の優先順位に反映する

想定利用者数が少ない場合は、開発する機能を必要最小限に絞り込み、開発コストを抑える方向に倒すことが有効です。逆に、専門分野を超えた広がりが期待できると判断した場合は、多様な利用シーン想定した機能を、当初から一部組み込んでおくという判断もあり得ます。予算300万円で現実的にどこまでの機能が作れるかという論点は、この想定利用者数の規模と密接に関わってきます。

集客・マーケティングの計画に反映する

逆算した想定利用者数が、そのまま自然に集まってくるとは限りません。人脈の中で興味を持ちそうな人に対して、どのタイミングで、どのような形で声をかけるかという集客の計画も、逆算の結果と合わせて考える必要があります。公開直後、最初のユーザーをどこから集めるかという論点は、まさにこの逆算した人脈のリストを、具体的な行動計画に変換する作業だと言えます。

資金計画・ランウェイに反映する

逆算した想定利用者数と価格設定から見込める月々の収益は、自己資金がどれくらいの期間持つかという資金計画(ランウェイ(資金が持つ期間))の計算にも直結します。想定利用者数が少なく、収益化までに時間がかかりそうな場合は、自己資金だけで開発・運用を続けられる期間を事前に計算し、その期間内にどこまで検証を進めるかという計画を立てておくことが重要です。

逆算を定期的に見直すタイミング

逆算した数字は、一度出したら終わりではありません。事業の進行に応じて、定期的に見直すことをおすすめします。見直しのタイミングとしては、次のような節目が挙げられます。

  • MVP公開直後:実際の登録者数・利用者数と、逆算した想定数を比較する
  • 公開から1〜3ヶ月後:継続利用率が想定通りかどうかを確認する
  • 価格変更を検討するとき:想定利用者数と価格の組み合わせが、事業として妥当かを再計算する
  • 専門分野以外からの反応が出てきたとき:人脈からの逆算に加えて、新たな需要層を組み込んだ計算に更新する

これらの節目で逆算を見直すことで、当初の仮説と実際の結果とのズレを早期に把握し、必要な軌道修正を行いやすくなります。

逆算の作業を、実際にどれくらいの時間で行うべきか

最後に、この逆算作業にかける時間についても触れておきます。逆算そのものは、人脈の棚卸しと簡単な計算だけであれば、半日から1日程度で完了できる作業です。一方で、精度を上げるためのヒアリングやアンケート、事前登録リストの作成まで含めると、1週間から2週間程度の期間を見込んでおくとよいでしょう。

ここで注意したいのは、逆算の精度を上げることに時間をかけすぎて、肝心のMVP開発に着手するタイミングが遅れてしまうことです。逆算はあくまで「着手する価値があるかどうか」を判断するための材料であり、100%の精度を求める作業ではありません。ある程度の目安が見えた時点で、次のステップ(MVPの開発着手)に進む判断も、個人・複業で進める場合には重要な意思決定になります。

目安として、逆算にかける時間は、その後の開発にかける期間全体の1割程度に収めることを意識すると、バランスの取れた進め方になりやすいです。例えば、MVP開発に2ヶ月を見込んでいるのであれば、逆算とその検証には1週間前後を目安にする、といった具合です。

まとめ

想定読者数・利用頻度を自分の専門分野の人脈から逆算する方法は、次の3ステップで整理できます。

  1. 自分の専門分野の人脈の規模を、まず把握する
  2. その中で、実際に興味を持ちそうな人の割合を見積もる
  3. さらにその中で、実際に使い続けてくれる割合を、慎重に見積もる

この逆算は、大規模な市場調査ができない個人・複業の立場でも、手元にある人脈という資産を使って、コストをかけずに需要の目安を立てられる実践的な方法です。ただし、逆算した数字はあくまで仮説であり、実際にMVPを公開し、実測データを踏まえて継続的に見直していく姿勢が欠かせません。数字が小さかったとしても、それを悲観するのではなく、小規模な検証の段階として捉え、目の前の利用者に価値を届けることを優先してください。

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