アイデアの種の探し方は、大きく2つに分かれる
「サービスを作りたいけれど、何を作るか決まっていない」という段階で、最初につまずくのがここです。アイデアの探し方には、大きく分けて2つの方向があります。
1つは、自分が毎日やっている業務の中から探す方法。もう1つは、自分の外側にある他者の課題から探す方法です。
どちらも間違いではありません。ただ、どちらから探すかによって、その後の検証のしやすさも、必要な労力も、大きく変わってきます。この記事では、2つの方向それぞれの強みと弱みを整理し、自分がどちらに向いているかを見極める基準を示します。なお、そもそもアイデアをどう1つの形にまとめるかについては、アイデアが浮かんだら最初に書く、3行メモの型で扱っているので、種が見つかった後はそちらも参考にしてください。
業務発のアイデア探しの強みと弱み
業務発とは、士業・医療職・店舗経営者・会社員などが、自分が日々こなしている業務や、社内で使っている自作のExcelシート・手順書・チェックリストなどを起点に、「これはサービス化できるのでは」と考える探し方です。
強み
- 需要の実在を疑わなくていい。 自分がその業務を毎日やっている時点で、少なくとも1人(自分)には確実に需要があります。「本当に困っている人はいるのか」という一番厄介な問いを、最初からクリアした状態でスタートできます。
- 業界特有の細部を知っている。 専門知識ツールが失敗する典型は、業界の「当たり前」を知らずに作ってしまうことです。業務発なら、その当たり前ごと形にできます。
- 最初のユーザーに手が届く。 既存の顧客・同業者・取引先など、声をかけられる相手がすでにいます。ゼロから見知らぬ人にリーチする必要がありません。
弱み
- 「自分だけの困りごと」である可能性を疑いにくい。 毎日困っているからこそ、それが本当に他の人にとっても困りごとなのか、客観視しづらくなります。自分の職場特有の事情(古いシステム、特殊な取引慣行など)を、業界全体の課題だと錯覚してしまうことがあります。
- 業務改善止まりになりやすい。 「自分の仕事が楽になるツール」と「他人がお金を払ってでも使いたいサービス」の間には距離があります。前者で満足してしまうと、サービス化の一歩手前で止まります。
- 視野が自分の勤務先・業界の枠内に閉じがちです。 隣接業界や、そもそも異なる職種の人が同じ悩みを抱えていないか、意識的に外に目を向ける必要があります。
外部課題発のアイデア探しの強みと弱み
外部課題発とは、SNSの不満投稿、競合サービスのレビュー、知人へのヒアリング、検索キーワードの需要調査などを通じて、自分の外側にある「他者の悩み」を起点に探す方法です。
強み
- 市場の広さを最初から見渡せる。 特定の職場・業界に縛られず、複数の情報源を横断して探すため、より大きな市場、あるいはニッチだが確実に存在する市場を見つけやすくなります。
- 競合の不満から差別化点が見える。 競合サービスのレビュー・SNSの不満から、次の一手を見つける方法にあるように、既存サービスへの不満は、そのまま「次に作るべきものの仕様書」になります。ゼロから発想するより、改善点が明確です。
- 大手が見落としている隙間を狙いやすい。 業務発が「自分の専門性」という縦の軸で掘るのに対し、外部課題発は「世の中の不満」という横の軸で探すため、大手が狙わない「個人でも勝てる」市場の見つけ方で挙げられるような、規模が小さすぎて大手が参入しない市場に気づきやすい傾向があります。
弱み
- 需要が「本当にある」のか、自分では判断できない。 他者の悩みは、自分が体感していない分、深刻度や頻度を見誤りやすいという弱みがあります。「困っているように見える」と「実際にお金を払うほど困っている」の間には大きな差があります。
- 検証の工数が余計にかかる。 ヒアリングやアンケート、市場調査など、業務発なら不要な手順を踏む必要があります。フェイクドアテストやランディングページ検証など、外部から需要を確かめる作業がほぼ必須になります。
- 最初のユーザーがゼロから。 声をかけられる既存の顧客基盤がないため、公開後の初期ユーザー獲得を、告知やSNS発信からすべて組み立てる必要があります。
どちらが自分に向いているか、3つの軸で見極める
自分にどちらが向いているかは、次の3つの質問で見極められます。
| 見極めの軸 | 業務発が向いている | 外部課題発が向いている |
|---|---|---|
| 既存の顧客・同業者ネットワーク | ある(士業・医療職・店舗経営者など) | 薄い、またはこれから作る |
| 検証にかけられる時間 | 短くていい(需要は実在済み) | ある程度必要(需要の確認から) |
| アイデアの独自性の源泉 | 専門知識・業務経験 | 情報収集力・観察力 |
サブペルソナで言えば、専門職スピンオフ型(士業・医療職など)や店舗・地域事業者DX型は、既存の顧客・同業者ネットワークを持っていることが多く、業務発が自然に噛み合います。一方、副業リベンジ型や複業・小予算検証型で、まだ特定の専門業務に根ざした強みがない場合は、外部課題発から探し、「誰の」「どんな悩み」を解決するのか。アイデアの主語を決めるという進め方で主語を明確にしていくのが向いています。
また、両者は排他的ではありません。業務発で見つけた種を、外部の同業者や近い職種の人にヒアリングして裏取りする、あるいは外部課題発で見つけた市場を、自分の過去の業務経験に照らして「本当に自分が作れそうか」を確認する、という組み合わせ方も十分に成立します。
詳細はコラムへ
どちらの方向から探すにせよ、最終的に必要になるのは「本当に欲しい人がいるか」の検証です。業務発であれば身近な同業者へのヒアリングから、外部課題発であればフェイクドアテストやランディングページ検証から始めることになります。それぞれの具体的なやり方は、コラムの各記事で詳しく扱っています。まずは自分がどちらの入口から始めやすいかを見極め、次の一歩に進んでください。

