同じ直し方を繰り返しても、直らないことがある

AIと対話しながら試作を作っていると、「ここがおかしいので直してください」と伝え、直ったように見えて、また同じような不具合が別の形で出てくることがあります。1回目は仕方ないと思えても、2回目、3回目と同じパターンが続くと、多くの人は「自分の伝え方が悪いのだろう」と考えて、指示の書き方を工夫し始めます。

その判断は半分正しく、半分は見当違いです。AIとの対話を繰り返して試作を改善していく進め方そのものは基本として間違っていません。ただし、うまくいかない原因が「伝え方」ではなく「土台」にあるとき、伝え方だけをどれだけ磨いても症状は消えません。むしろ直すたびに別の場所が壊れる、直したはずの箇所がしばらくすると元に戻る、といった形で悪化していくことすらあります。

ここで整理したいのは、3回試して変わらないと感じたときに、次にどちらへ動くべきかという分かれ目です。

プロンプトを変えるべきサイン

まず、指示の出し方を見直すべきケースです。次のような状態に心当たりがあれば、設計ではなく伝え方の問題である可能性が高いといえます。

  • AIが「何を直せばいいか」を毎回聞き返してくる、あるいは的外れな箇所を直している
  • 修正のたびに関係ない部分まで大きく書き換えられてしまう
  • 「バグを直して」のように指示が抽象的で、期待する結果を具体的に示せていない
  • エラーメッセージや再現手順をそのまま貼らず、口頭の説明だけで伝えている
  • 一度に複数の要望(デザイン変更・機能追加・不具合修正)を同じメッセージに詰め込んでいる

これらに該当する場合は、設計を疑う前にやることがあります。1つの依頼につき1つの目的に絞る、直したい箇所を明確に指し示す、エラーが出ているならそのメッセージを省略せず貼る、といった基本の徹底です。アプリを作るためのプロンプトの書き方、最初に知っておきたい型に立ち返り、依頼の粒度を1つずつ小さくしてから再度試すだけで解決することは珍しくありません。この段階でまだ設計に手を入れる必要はなく、対話の質を上げる工夫を先に尽くすべき局面です。

設計を見直すべきサイン

一方で、伝え方をどれだけ整えても改善しないときは、試作そのものの土台に無理が生じているサインです。次のような状態が3回以上続くなら、プロンプトの工夫では解決しないと考えたほうが安全です。

AIとの対話が3回続けても改善しないとき、プロンプトを変えるか設計を見直すかを分岐させる判断ツリー。

  • 同じ箇所を直すたびに、以前は動いていた別の機能が壊れる
  • AIが「この修正は難しい」「別の方法が必要かもしれない」と繰り返し表明する
  • 1つの機能を直すために、関係のない広い範囲のコードまで読み直す必要が生じている
  • 修正の説明が毎回長くなり、AI自身も全体の構造を把握しきれていないように見える
  • そもそも最初に思いつきで作った部分に、後から別の機能を無理やり継ぎ足してきた自覚がある

これらは、AIの理解力の問題というより、試作の設計そのものが複雑さに耐えられなくなっているサインです。早く作るための妥協が、後で重荷になる「技術的負債」の正体を思い出してください。最初は動けばよかった部分が、機能が増えるにつれて土台として無理を抱え始めている状態です。この場合、プロンプトをどれだけ工夫しても、AIは「壊れた土台の上で辻褄を合わせる」作業を繰り返すだけになります。

見分け方をもう一段シンプルにするなら、次の1点で判断できます。

「直す指示を変えても、同じ種類の不具合が形を変えて再発するか」

再発するなら設計側の問題、再発せず単に伝わっていないだけなら伝え方側の問題です。

見切りをつける前に、一度立ち止まる

ここで注意したいのは、3回改善しなかったからといって、すぐに「もう自分では無理」と結論を急ぐ必要はないという点です。設計を見直すというのは、多くの場合、全部を作り直すことではありません。無理が生じている一部分だけを整理し直す、あるいは機能を後回しにして今の範囲に絞る、といった小さな仕切り直しで十分なことがほとんどです。

逆に、伝え方の工夫でも設計の整理でも改善の兆しが見えず、AIとのやり取り自体が堂々巡りになっていると感じたら、それは技術的な限界のサインかもしれません。その先の判断については、AIがバグを直せなくなったとき、次にどうすればいいかで扱っています。

詳細はコラムへ

プロンプトの基本や技術的負債の考え方、行き詰まったときの次の一手については、それぞれ専門に扱ったコラムがあります。今どちらに当てはまるかを見極めたうえで、該当するコラムを参照してください。